• 6月 1, 2025

健診での胃バリウム検査

当院でも健診での胃バリウム検査にて異常指摘あり、受診される患者様が多数おられます。

バリウム検査にてよく見受けられる所見として、慢性胃炎、胃ポリープの疑いなどが多い印象です。

慢性胃炎の指摘があった方の多くが胃カメラをしてみると、ピロリ菌感染による萎縮性胃炎の場合が多く見受けられます。ピロリ菌は胃癌および胃潰瘍・十二指腸潰瘍などのリスクとなります。胃癌の95%以上はピロリ菌感染と言われています。保険診療にてピロリ菌検査および除菌を行う場合は胃カメラを受けることとされています。これは、除菌をする前に胃炎の状態を確認する意味に加え、先に除菌を行うと早期胃癌の発見が困難になる可能性があり、見落とす恐れが生じうるためです。そのため、慢性胃炎の指摘を受けたことがある方は胃カメラを行い、ピロリ菌感染を疑う所見があれば、ピロリ菌検査を受けることが強く望まれます。

胃ポリープの指摘のある方は多くは胃底腺ポリープという良性のポリープが多く、ピロリ菌未感染の方に多いです。しかしながら、バリウムではポリープに関しては良性の有無の判別はできません。中にはバリウム検査では慢性胃炎の指摘はなかったが、胃カメラにて萎縮性胃炎を認め、ピロリ菌陽性であった場合や過形成性ポリープ、胃癌であった症例も少なくありません。胃ポリープの指摘があった方も胃カメラを一度受けることが強く望まれます。

過去の症例にて検査した中であった例を3つ挙げます。

①40代男性

健診の胃バリウム検査にて慢性胃炎を指摘され、初めて胃カメラ検査施行。

ピロリ菌陽性の萎縮性胃炎を認めたが、その際に胃体部に早期胃癌を認めた。

除菌前に内視鏡治療目的で専門医療機関に紹介し、内視鏡的粘膜下層粘膜剝離(ESD)を行い、完全切除。その後、ピロリ菌除菌行い、年単位での胃カメラフォローおこない、再発および新規病変なく、経過。

②70代男性

以前健診のバリウム検査にて慢性胃炎を指摘され、他院にて胃カメラ施行し、ピロリ菌除菌。

除菌後、10年以上経過していたが、フォローの胃カメラをしておらず、検査を勧め、検査行い、早期胃癌を2病変認め、専門医療機関に紹介し、内視鏡的粘膜下層粘膜剝離(ESD)を行い、完全切除。現在も年単位にて胃カメラフォローを行っている状況。

③60代女性

健診のバリウム検査で胃ポリープ指摘あり、初めて胃カメラ検査施行。

指摘部位に早期胃癌を認め、指摘のなかった萎縮性胃炎も認め、ピロリ菌陽性。専門医療機関に紹介し、内視鏡的粘膜下層粘膜剝離(ESD)を行い、完全切除。その後、ピロリ菌除菌行い、現在も年単位にて胃カメラフォローを行っている状況。

バリウム検査の異常指摘で胃カメラを行うと、多くの場合、ピロリ菌感染のみで胃癌を認めることはありませんが、上記の症例のように偶発的に早期胃癌をみとめる症例も少なくありません。早期胃癌の場合は内視鏡(胃カメラ)での切除は可能ですが、進行し、進行胃癌となると外科的治療や抗がん剤治療となってしまいます。そのため、早期発見をするためには胃カメラをなるべく早い段階で受けることが、望ましいです。また、除菌後に胃癌の発見することもあることからも除菌後しばらくは年単位での胃カメラフォローが強く推奨されます。

胃カメラは昔のイメージで苦しそうということで敬遠される方も多いかもしれませんが、胃癌リスク回避のためにも一度、胃カメラを受けてみてはいかがでしょうか。迷われる方も多いかと思います。胃カメラを受けるべきかどうかの相談でも構いませんので、異常指摘あった場合は当院に一度御相談ください。

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